原田拾六氏に師事して14年。2013年の初個展では鮮烈なデビューで衆目を集めた小出尚永さんの作品。残念ながら2020年に42歳の若さで亡くなられましたが、彼の文化的素養は陶芸のみならず日本人としての美学を得るべく修養しておられたように思います。 丁寧なろくろ、古備前にも通じる素直な造形、土の吟味、そして味わい深い焼成は師の原田さんから譲り受けた何よりの贈り物だったと思います。 窯炊きが終わったと聴き、今か今かと心待ちにしていた備前への訪問。掃き清め打ち水をされた彼の陶房には切ってきたばかりかと思う瑞々しい花が一輪、なんとも心地よい空間でした。 一服のお茶をいただき、あれこれ話をしつつ選ばせたいただいた作品の中にこの徳利がありました。 何気ない丹精なつくりに、よく焼き上げた土肌にかかる自然釉の美しさ。　一箇所、降りかかった灰が流れて埋もれた熾（おき）との境目に釉の塊ができていた跡があります。丁寧に削ってあるので手にとったときにもさほど違和感なく、見た目には良いアクセントになったのではないかと思います。 是非一度酒を注ぎその様を見てみたいと思っておりましたが、なに分下戸なもので使わずに置いておりました。　静寂の中に、どこか華のある小出尚永さんの作品、その数はあまり多くはないと思います。 　　高さ14cmx直径8cm 　　共箱、共布、栞